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インターネット公開文化講座

文化講座

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発酵食品の魅力にせまる

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第5回:各論その(4)~日本酒~

 前シリーズでは「みんなの幸せレシピ」と題し、(1)初めての1人暮らしごはん、(2)パパッと2人ごはん、(3)一緒に作れる!KIDSごはんの3つのジャンルに分けて、みんなが幸せになれるレシピをご紹介しました。今シリーズでは、代表的な発酵食品を毎月順番に取り上げ、その特徴や健康効果、おすすめの料理をご紹介しています。

 第5回目の今月は、「日本酒」

寒い毎日が続いています。今年は例年よりも冬の到来が早く感じられますね。木枯らしが吹く、こんな季節のお楽しみと言えば、おいしい手料理と熱燗・家族の笑顔でしょうか?
お酒好きにはたまらない「搾りたての新酒」が、格別においしく味わえる季節の到来でもあります。
「酒は百薬の長」と昔から言われるように、ほどよく飲めば健康にも良いことは知られていますが、近年は若者を中心に、「日本酒はアルコール度が高くて悪酔いする」、「二日酔いになる」などと、敬遠されがちでもあるようです。
一方、海外では爆発的な日本食ブームに乗って、日本酒の愛好家が激増しているとか。
今回は、日本を代表するお酒=日本酒の魅力や豆知識・知られざる健康効果・日本酒を使った料理レシピなど、多岐に渡ってご紹介します。

★日本酒とは

米を原料とした醸造酒です。清酒とも呼ばれています。米と米麹、水を原料にして発酵させ、更に濾したものをいいます。
日本酒の醸造法は、世界に類をみないほど複雑で巧妙です。米を蒸して麹を作り、それを蒸した米にふりかけて水を加えもろみを作ります。それを絞って加熱し、熟成させます。出荷前に再度加熱殺菌した後、瓶や樽に詰めるのです。

日本酒は他のアルコール飲料に比べるとアミノ酸が豊富なので、身体機能が活性化され、新陳代謝が活発になります。また、善玉コレステロールを増やすため、動脈硬化の予防も期待できるなど、様々な健康効果が期待できます。調味料としての日本酒は、臭いを消す・風味を良くする・食材を柔らかくするなど、和食だけでなく、どんな料理にも使える優れものです。

<日本酒の歴史>

酒造メーカーを見学

米による酒造の技術は、中国から百済を経て8世紀ごろ伝わったとされています。古事記には「八岐大蛇(やまたのおろち)」を退治するときに米麹を使用した酒の作り方が記されているほどです。平安末期から鎌倉時代になると、酒は商品として売られるようになります。室町時代に現在の日本酒に近い形になり、江戸時代に杜氏(とうじ)を中心とした酒造場が各地に出現し、現在の日本酒の醸造法の基礎が確立しました。


<日本酒の種類と特徴>

日本酒は、米の種類や地域、蔵元、製法などによって味や香りも千差万別です。ここでは、大まかな種類とその特徴についてご紹介します。


<吟醸酒>

精米歩合60%以下(精米歩合とは、白米の玄米に対する重量の割合で、低いほど高級で雑味が少なくなる)の白米を原料に用いて低温でゆっくり発酵させ、丁寧に造ったもの。
味、香りともに日本酒の最高峰。白米の精米歩合が50%以下のものが大吟醸酒。

<純米酒>

精米歩合70%以下の白米・米麹と水だけを原料として造られたもの。米のうまみを生かした風味が特徴。

<本醸造酒>

精米歩合70%以下の白米・米麹・水および醸造アルコールを原料として造られたもの。もっとも基本的な日本酒。

そのほかにも、さわやかでのど越しの良い発泡性のものも人気があります。容量も家庭では1升瓶から小さい紙パックまで様々あり、必要に応じて使い分けることが出来ます。(写真参照)


<日本酒の使い方と飲み方>

<料理が美味しくなる使い方>

煮物・吸い物・たれなどに使うと、料理にコクと深みが増します。
また、アルコール分によって料理の日持ちも長くなります。
魚や肉に直接ふりかけると、臭みを消したり、素材を柔らかくする、素材の旨みを増すなどの効果があります。

<飲み方>

★「適量飲酒」を心がけましょう

日本酒は、適量・適正を守って飲むようにしましょう。
一般的に1日の適量は「日本酒なら1~2合」と言われています。
ただし、個人差があるので、自分の適量を守り、週に2日の休肝日を作って飲むことが大切です。

華づ枝作~和風前菜7種盛り~

★料理と一緒にゆっくりと楽しみましょう

空腹の状態で飲むと胃からすぐに腸に回ってしまい、酔いが急に回ります。
食べてから、あるいは食べながら、ほどよい量をゆっくりと楽しむようにしましょう。


★季節に合わせて楽しみましょう

その日の気温や体調に合わせて、室温のまま飲んだり、冷やして飲んだり、燗をして温めて飲みましょう。
酒造メーカーの当主が語るには、1升瓶を温度によって幾通りも楽しんで、じっくりと味わってもらいたいとのこと。
瓶のフタをあけた直後と、空気が馴染んでからでは味が変わるので、少しずつ変化する様子を楽しんでもらいたいと話してくれました。

ライムやレモンなどの柑橘類を少量絞って入れると、爽やかな香りが楽しめます。
風邪をひいたときに「卵酒」を飲みますが、これは体を温める効果を期待したものとされています。

<日本酒の効能と健康>

日本酒は他のアルコール飲料よりもアミノ酸が豊富に含まれているので、以下のような効用があります。

  • 豊富に含まれるアミノ酸には、疲労回復・体力や筋力アップ・免疫力が強化されるので身体機能が活発化される
  • 血行が促進されるので新陳代謝が活発になり、肌の色つやが良くなる
  • 体を温める作用が長く続くので、肩こりや冷え症に効果的
  • 善玉コレステロールを増やす働きがあるので、動脈硬化の予防に役立つ
  • ゆっくりとくつろぎながら飲める日本酒は、精神的ストレスが解消される

<日本酒の豆知識(飲む温度)>

"燗してよし、冷やしてよし"の日本酒は、飲用温度の表現も実に情緒たっぷり。
寒い季節に恋しい燗には、日向(ひなた)燗(かん)(30度辺り)から飛び(とび)きり燗(かん)(55度以上)まであり、中でも人肌(ひとはだ)燗(かん)(35度辺り)は、女性の胸の谷間の温度とか。
冷やの雪冷え(ゆきひえ)(5度)や花冷え(はなひえ)(10度)などの表現からも、古くから日本の風土と共に育まれた日本酒文化が感じられます。
同じ銘柄でも、温度によって幾通りにも楽しむことができるのが日本酒の奥深さ。
一年を振り返りながらしみじみと飲むこの時期のお酒は、日本酒が一番似合いそうです。

<日本酒を使ったとっておきレシピ>

日本酒に合う、日本酒を使った料理をご紹介します。
一人でも、大勢でも楽しめます。

常夜鍋~ひとり鍋~

日本酒を飲みながらひとり鍋
残ったお酒は翌日の料理に使って楽しみましょう♪

エネルギー218kcal、タンパク質15.7g、脂質14.1g、塩分1.6g(1人分)
材料 1人分
だし昆布 1枚(5×9㎝)
日本酒(燗冷ましでも可) 50ml
適宜
豚平切り肉(しゃぶしゃぶ用) 60g
豆腐 2~3切れ
レタス(中) 2~3枚
生しいたけ 1枚
にんじん 適量
ポン酢しょうゆ 大さじ2~3
大根 適量
赤唐辛子 適量

作り方

  1. 1人用の土鍋にだし昆布と日本酒、水(7分目位)を入れます。
  2. 1.に豚肉、適当な大きさに切った豆腐、手でちぎったレタス、軸を切って飾り切りにしたしいたけ、ピーラーで薄くスライスしたにんじんを入れます。
  3. 2.を火にかけて煮立て、手早く煮ます。
  4. 器にポン酢しょうゆと、もみじ卸し(大根の中に赤唐辛子を入れてすりおろしたもの)を添えます。
柿とほうれん草の白和え

日本酒できのこを酒蒸しして、料理に深みをだしましょう

エネルギー152kcal、タンパク質7.0g、脂質8.4g、塩分0.8g(5人分としたときの1人分)
材料 4~5人分
木綿豆腐 1/2丁
ほうれん草 100g
にんじん 50g
しめじ 100g
 
(A)  
大さじ2
少々
 
柿(又は干し柿) 1/2コ
 
(B)  
白練りゴマ 大さじ3
白みそ(西京みそ又はあわせみそ) 50g
砂糖 大さじ1
しょうゆ(あれば薄口しょうゆ) 小さじ1

作り方

  1. 豆腐は十分に水に晒し、4等分に切ってペーパータオルで包み、重しを乗せて水気を切ります(冷蔵庫で30分間程)。
  2. ほうれん草は塩茹でして水にとって芯まで冷やし、水気を絞って3cm長さに切ります。
  3. にんじんは短冊切りにし、2.と同じ鍋で茹でます。
  4. しめじはほぐしてサッと洗い、水でぬらした鍋に(A)と共に入れ、蓋をして中弱火で酒蒸ししてザルに上げ、手早く冷やします。
  5. 柿は小さいいちょう切り(干し柿は短冊切り)にします。
  6. 1.をボウルに崩して入れ、泡だて器でよくほぐしてから(B)を入れます。
  7. 6.に2.~5.を入れて和えます。
  8. 器に7.を盛ります。
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