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インターネット公開文化講座

文化講座

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発酵食品の魅力にせまる

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第10回:各論(その9)~パン~

 前シリーズでは「みんなの幸せレシピ」と題し、(1)初めての1人暮らしごはん、(2)パパッと2人ごはん、(3)一緒に作れる!KIDSごはんの3つのジャンルに分けて、みんなが幸せになれるレシピをご紹介しました。
 今シリーズでは、代表的な発酵食品を毎月順番に取り上げ、その特徴や健康効果、おすすめの料理をご紹介しています。

 第10回の今月は、「パン」

 日本人の約40%が朝食にパンを食べるなど、近年パン食の文化が急速に広まりつつあります。
 主食やおやつとして食べられているパンが、どのように日本に伝わってきたのか、世界各地ではどのようなパンが食べられているかをご紹介します。

★パンとは

小麦粉やライ麦粉を原料にした食品で、ポルトガル語の「パン」からきた名前です。
フランス語やスペイン語でもパンと呼びます。
ドイツでは「ブロード」、イギリス・アメリカでは「ブレッド」と呼ばれ、世界各国でそれぞれの名称で呼ばれています。

<パンの歴史>

炊いても米のように柔らかくならない小麦を、昔の人々は挽きつぶして「かゆ」として食べていました。
その後、小麦を挽く技術が向上し、小麦粉と水を混ぜて焼く「パン」が誕生しました。
最初のパンは生地を発酵させずに焼いた「無発酵パン」で、今のクレープやせんべいのようなものだったと考えられています。
インドの「チャパティ(全粒粉を水で練った平焼きパン)」や「ナン」、メキシコの「タコス」、イギリスの「スコーン」などがその名残りとされています。
その後、メソポタミア文明の地にいたバビロニア人(現在のイラク南部)が自然発酵させた小麦を使って焼いた「発酵パン」ができました。
メソポタミアからエジプト(紀元前4000年頃)、ギリシャ(紀元前1000年頃)、ローマ(紀元前2世紀)へと伝わりました。

華づ枝作:
桜あんパン
(写真左の丸型のパン)

日本のパンの歴史は、1543年に種子島にポルトガル船が漂着した際に、鉄砲と一緒にパンも伝わったと言われています。
幕末、江川太郎左衛門が伊豆韮山で菓子パンを焼き、明治の文明開化で一般にも普及しました。
東京オリンピックを境に世界のパンが紹介され、食べられるようになりました。
日本で最初に「あんパン」を作った木村屋では当時、日本酒の酒だねを使って中にあんを詰めた「あんパン」を販売しました。

<パンの豆知識>

パンは大きく分けて2種類、「無発酵パン」と「発酵パン」があります。

  • ☆無発酵パン...イーストを使用せず、膨らみのないパン(例:チャパティ・ナンなど)
  • ☆発酵パン...イーストを使用し膨らませるパン(例:食パン・ロールパンなど)

「無発酵パン」はイーストを使用しませんが、「発酵パン」には膨らませる為にイーストを使用します。
イーストには大きく分けて、3種類あります。

扱いやすいセミサフイースト

市販されている天然酵母

  1. 生イースト...パン酵母そのものの事を指し、使い勝手が最も良い。冷蔵保存で1週間位持つ
  2. セミサフイースト...生イーストとドライイーストの中間で、使いやすさ・保存性に優れている
  3. ドライイースト...生イーストを乾燥させたもの。保存性が高い

その他にも、「天然酵母」があり、ブドウなどの果実や穀物に付いている野生の酵母を利用して種を作ったもので、風味がとても良いのが特徴です。
天然酵母を作るには温度管理が難しく、手間と時間がかかります。
発酵力がイーストより弱く、パン作りに時間がかかり、扱いが難しいとされていますが、近年は各種の酵母が市販されるようになりました。

<パンの種類>

世界には様々な種類のパンがあります。
国ごとに代表的なパンを紹介します。

<フランス>

フランス領だったベトナムで現在もよく食べられているフランスパン(バインミー)

  • ◇バケット(フランスパン)...小麦粉、パン酵母(イースト)、塩、水だけで作る皮がパリッとしたパン
    生地には砂糖を使わないため、硬く仕上がるのが特徴です
    フランスでは、バケットがパン総売り上げの70%に相当します
  • ◇クロワッサン...生地にバターを折り込み、三日月形に作るフランス発祥のパン
    サクサクとした軽い食感が特徴です
  • ◇カンパーニュ...フランス語で「田舎パン」を意味する素朴なパン
    皮はパリッと、中はふっくらとした生地です

<ドイツ>

  • ◇プレッツェル...小麦粉、パン酵母(イースト)、塩、水だけで作るドイツの塩味パン
    プレッツェルには柔らかく焼き上げた大きい種類と、固く焼いた小さい種類があります
  • ◇マイスナー・フンメル...磁器やワインを運ぶ際、使者に注意を促すために馬車に一緒に載せたもの
    やや甘いおせんべいのような味

写真左下:ドイツで食べたプレッツェル

中が空洞のパン(マイスナー・フンメル)を焼く老舗カフェの前での筆者
創業1843年の老舗


<イタリア>

  • ◇フォカッチャ...イタリアの平たいパン
    ピザの原型とも言われ、「火で焼いたもの」という意味です

<イギリス>

  • ◇イングリッシュマフィン...パン酵母(イースト)で発酵し、コーンミール(トウモロコシ粉)やごま、けしの実をまぶして焼いた丸いパン
    2つに割ってトーストし、バターやジャムをたっぷりのせて食べるのがイギリス風です
    日本では、ベーコンやハム、目玉焼き、チーズなどを挟んで食べます

ロンドンのマンダリンオリエンタルホテルで食べたイングリッシュマフィン

華づ枝作:バケットにラムバターをぬって


  • イギリスでは「ラムバター」を赤ちゃんが生まれる前にお母さんが作り、誕生お祝いに訪れた人々にふるまう習わしがあります。

<インド>

  • ◇ナン...平たい楕円や三角形をしており、タンドールと呼ばれる釜の内壁に張り付けて焼かれるパン

インドでナンを食べる筆者


<日本>

食パン:バターやジャムをつけて食べるのが一般的です
ロンドンのマンダリンオリエンタルホテルで食べた食パン

  • ◇食パン...食パンは日本の呼称で、四角い型に生地を入れて発酵させて焼いたパン
    フランスではパン・ド・ミーと呼ばれています
  • ◇ロールパン...薄くのばしたパン生地をくるくるとロール状に巻いて焼いたパン
    生地にバターを巻き込んだパンをバターロールと呼び、レーズンなどを巻き込んだレーズンロールもあります

<中国>

華づ枝作:エビ肉まん

  • ◇中華まんじゅう...中国では「包子(パオツ)」と呼ばれ、小麦粉、水、砂糖、酵母(イースト)又はベーキングパウダーなどをこねて発酵させた柔らかい皮で具を包み、蒸し上げたもの

<パンと健康>

パンは炭水化物、たんぱく質、ビタミンB1・B2などのビタミン類、カルシウム・鉄などのミネラルを豊富に含んでいます。
遺伝子の合成や造血に欠かせない葉酸も多く含みます。

ご飯やうどんと同じく、主食として食べられています。

パンの主材料の小麦には以下の栄養素を含みます。

  • ★ビタミンB1、B2、E...細胞の再生を促して老化を防ぎ、疲労回復に役立ちます
  • ★カルシウム...骨を丈夫にします

小麦のなかで最も栄養素が多いのは胚芽の部分のため、より健康的に過ごすには全粒粉(小麦を胚芽ごと粉にしたもの)を使ったパンを選ぶと良いでしょう。

<おいしいパン2品>

本格的なパンの作り方と市販のパンを使った簡単レシピをご紹介します。

ポテトフォカッチャ

マッシュしたじゃがいもを練り込んだイタリア発祥のパン

エネルギー108kcal、タンパク質2.6g、脂質2.4g、塩分0.8g(12切れとした場合の1切れ分)
材料(22cm丸型・1コ分) 分量
じゃがいも(男爵) 中1コ(120g)
 
A  
強力粉 200g
薄力粉 50g
砂糖 小さじ2
岩塩 小さじ1
オリーブ油 大さじ1
セミサフイースト 小さじ1 (2g)
プレーンヨーグルト 5g
130~150ml
 
打ち粉(強力粉) 適宜
オリーブ油 大さじ1
岩塩 適宜

作り方

  1. じゃがいもは皮をむき、8等分位に切って水から茹でてマッシュします(又はつぶします)。
  2. ホームベーカリーに1.と(A)を入れ、スタートを押します。終わったらすぐに取り出します(1時間程かかります)。
  3. バットに打ち粉を振り、丸く成形します。生地が柔らかい為、手粉をたっぷりと振り、ひっくり返しながらガスを抜いて丸めます。
  4. オーブンシートを敷いた天板に3.をのせ、水でぬらして固く絞ったペーパータオルをかぶせ、15分間程寝かせます。
  5. 4.にオリーブ油を塗り、オリーブ油を付けた指で、10~12カ所程穴を開けます。
  6. 岩塩を5.の全体にかけます。
  7. 190℃に予熱したオーブンで22~23分間程焼きます。
  • ※ニーダー(パンこね機)を使用する場合は1.のじゃがいもは生地をこねた後で加えます
  • ※2.の工程で取り出さず、そのままホームベーカリーで食パンの形に焼いても良いでしょう
  • ※一般的なドライイーストも、セミサフイーストと同量使用します
ツナとトマトのオーブンサンドイッチ

朝食やおやつにもぴったりなパンのアレンジ料理

エネルギー264kcal、タンパク質10.7g、脂質13.3g、塩分1.2g(1人分)
材料(4人分) 分量
食パン(8枚切り) 4枚
マーガリン 適宜
トマト(小) 2コ(150g)
ツナ缶 1缶(80g)
ミックスチーズ(ピザ用) 40g

作り方

  1. 食パンは1枚を半分に切り、マーガリンを塗ります。
  2. トマトは種を取り、角切りにします。
  3. 油を切ったツナ缶を1.の上にのせ、その上に2.をのせます。
  4. 3.の上にミックスチーズをのせ、オーブントースターでチーズが溶ける位まで焼きます。
  • ※写真にはハーブを添えました
発酵食品の魅力にせまる
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