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やきもののやさしい鑑定

日本骨董学院・学院長
東洋陶磁学会・会員
日本古美術保存協会・専務理事 細矢 隆男

韓国・朝鮮陶磁器の鑑定

日本人の心のふるさととされる朝鮮半島に生まれた焼き物は、古くから「高麗もの」あるいは最近では「李朝」と呼ばれ、親しまれてきました。われわれ日本人の美意識は、中国人よりどちらかというと朝鮮の人たちに近かったともいえます。日本文化そのものが、もともと朝鮮半島から伝来したものであり、弥生時代や古墳時代に多くの人たちが朝鮮半島から渡来したという説にしたがえば、日本文化と朝鮮半島の文化がきわめて類似していても不思議ではありません。朝鮮の焼き物を日本人が好む理由は「素朴」「純朴」「奇をてらわない自然さ」といえます。それが日本の美意識である「侘び・寂び」に自然にとけ込み、茶の世界では朝鮮陶磁器がとても愛好されているゆえんでもあります。今回はその朝鮮のやきものの特徴を学んでゆきましょう。

まず朝鮮陶磁器の技法的分類をしてみましょう。

(1)刷毛目鉄絵・・・白土を刷けで塗ったところに鉄釉で絵をかく技法。

(2)刷毛目掻き落とし・・・白土を刷毛で塗ったところを釘の頭のようなもので掻き落として、下地を絵柄として表現する技法。

(3)白黒象嵌・・・いわゆる三島象嵌で、印判ないしは彫ったところに白土ないしは黒い土を塗ったり、埋め込んでふき取り、絵柄とする技法。

(4)粉引・・・白土に全体をつけ込んで作ったもの。したがって全体に白土がかかっている。数が少ないため高価である。

(5)黒高麗・・・鉄釉を全体にかけて焼いたもの。全体が黒色に仕上がっている。

(6)白磁(染付け含む)・・・白い磁器でできたやきもの、ないしはそれに呉須(酸化コバルト)で着色された白磁。

 朝鮮でははじめに仏教が繁栄しましたが、後に儒教に変わりました。儒教では何ものにも染まらない純真、純白な白が重んぜられました。貴族階層で白磁が重要な作品として大切にされるのはそのためです。代表的な美しい白磁は「分院」という王家で使用する白磁を多く焼いた窯で制作されましたため、その名をとって「分院」とよばれています。

●鑑定のポイント
 代表的見所は高台です。(1)三日月高台 (2)竹節高台 (3)ちりめん高台 (4)兜巾 (5)高台の削り方などです。 (1) は高台を見ると、三日月に見える (2)は横から高台を見ると、竹の節のように見える。(3)は高台の中の削り方がちりめんのように、チリチリしたように見える。 (4)高台の真ん中の削り痕が三角に尖っている。(5)は高台の中の削りが外側より深く削られている。この特徴が「分院」作品の有力な特徴です。こうしたさまざまな特徴をまず捉えてください。すべてではありませんが、有効な鑑定ポイントとなります。

(1)
これは三日月高台と(3)のちりめん高台が一緒に写る写真
(2)
竹節高台
(4)
兜巾
(5)
高台の削り方

徳利などで見て直ぐにわかる特徴は、肩の張り具合です。頸から胴にいたる肩のところがやや出っ張っているところが、朝鮮ものの特徴といえますし、魅力でもあります。

徳利の写真
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