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骨董で贋作をつかまないシリーズ

日本骨董学院・学院長
東洋陶磁学会・会員
日本古美術保存協会・専務理事 細矢 隆男

あてにできない鑑定書

「古美術・骨董で贋作をつかまない方法」と題して、前回より述べさせていただいておりますが、今後古美術・骨董品を購入されるときにお役に立つことのできる実戦的な内容につきまして、今回も含めて11回にわたりお話してまいります。まず前回の復習ですが贋作というものは良いもの、美しいもの、高額なものにはどのようなものにも存在するということを再確認しておいてください。

「贋作」すなはちニセモノは古美術・骨董の世界を楽しむ上で、最大の難関といわれてきました。かくいう私もかつて贋作で大いに悩まされたものでした。どのような高名な鑑定人の方でも、どんなに著名な博物館の先生でも、有名な古美術商の方でも、贋作を買った経験のない方は絶無ですと断言できます。それらの贋作こそが、逆に反面教師となり、贋作に注意する大きな警鐘ともなっているといえるのです。

そこで私を含めてそうした贋作に泣いた先人の経験を生かした「贋物をつかまない方法」をここでまとめてみたいと思います。これからじっくり古美術・骨董をたのしみたいとお考えの方にはきっとお役に立つことでしょう。

1 「鑑定書」をたよりに買うべからず

まず第一番目の注意点ですが、古美術・骨董品には古い鑑定書が付いている場合があります。この鑑定書は和紙を二つに折ったところに書いたことから「折り紙」ともいわれ、折り紙付きなどという言葉のもとになったものです。古くからその道の権威者が書いたりしたものが多いのですが、実はそれの中には後世に書かれたりした怪しいものが多いのです。

鑑定書をたよりに買うなとは、どういうことかといぶかしがられる方も多いかと思われますが、世の中には立派な鑑定家もおられますが、多くはお金のために鑑定書を書くというのが彼らの目的で、これがなかなか油断がなりません。最近は中国の鑑定書にひどいものが多く見かけますので注意が必要です。こうした鑑定書を頭から信用して購入しては、後々悔いを残すことになります。十分注意したほうがよいでしょう。

また日本でも正式な法人格のところが鑑定書を出している場合、最近はその鑑定書そのものが偽造されている場合もありますので、購入の折には鑑定書番号と内容などを発行元に問い合わせて、しっかり確認した後で購入するという慎重さも必要です。いずれにしても鑑定書の付いている「美術品」に、すばらしいものは少ないと言えるのではないでしょうか。贋物だから、出来のよくない作品であるからこそ鑑定書をつけないと売れないということなのかもしれません。

鑑定書の一種に箱書きというものも古来あります。「折り紙」にしても「箱書き」にしても、最初は作品と一緒に添えられていたかもしれませんが、後に離されて、作品は再度箱書きされ、前の箱書きされた箱には似た作品が入れられて売られるというケースが後を断ちません。そう考えてみれば本物の美術品が一つあれば、箱書きはいくらでもできるということに気がつきます。中にはそうしたことをする悪い人たちがおります。またこうして出来た「本物の箱」だけが流通して、業者の市などで一山いくらで販売されることもあります。ですから「箱」だけが流通して、その箱を競って購入する業者さんたちもいるという「裏」の現実を知っておかねばなりません。

すなはち結論としては、購入に際しては、鑑定書、箱書きは信用しないという前提に立つこと、中身である作品より「鑑定書」とか「箱」を誉める業者には十分気をつける必要がある、ということになるでしょう。

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