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骨董で贋作をつかまないシリーズ

日本骨董学院・学院長
東洋陶磁学会・会員
日本古美術保存協会・専務理事 細矢 隆男

物を買うときは落ち着いてあわてない

私の個人的経験からもこのアドバイスは実に当たり前のことであり、簡単なように見えますが、いざ実際にいいもの、欲しいものに出会うと、なかなかできないことなのです。誰でもどうしても欲しいものに出会うとすぐに顔に出てしまいますし、あわてたようになってしまいがちです。かねてから欲しいと思っていた作品に出会えた・・と思ったら顔に出てしまいます。ところがプロは違います。顔に出さない、相手の骨董屋さんには関心がないように思われるように装う、ここがプロのプロたるゆえんです。肝心なところです。プロは欲しいものがあっても、顔に出しません。

皆さんも、欲しいものに出会ったときに、決して「あった~」なんて大きな声を出して、喜んではいけません。相手の業者さんに、もうこの人は買うな~と思われたらこちらの負けです。安くしてもらうという値段折衝はなかなか難しくなります。折角安くしてもらえるものが、安くならなくなります。相手の骨董屋さんは「強気」になってしまうからです。

これでは折角の買い物が楽しくなくなります。相手は売りたいわけですから、こちらがどうしても買いたいと思わせてはいけないのです。「それほど欲しいものではないけど、値段次第では買ってみてもいいかな~」というくらいな感じでしょうか。ポーカーフェイスというのでしょうか、本当は欲しいけど顔に出さない、決して欲しいと相手の骨董屋さんに悟られないように注意する、これが大切です。こうすると、相手の骨董屋さんはぎりぎりの所まで安くしてくれるかも知れません。

買い物は何でもそうですが、基本は安くていいものを買いたいということに尽きると思います。骨董も同じです。私は骨董を買う場合は、特に真剣に見ないといけないと思ってます。もちろん真贋の問題もありますが、限られた予算の中で楽しむのが骨董を買う楽しみだと思っているからです。無制限にお金があって、一流のお店で、相手の言うがままの値段でお買いになるのはもちろん自由ですが、決しておもしろくないと思います。いいものならなお更、安く買いたい、そのためにどう真剣に折衝するか、これがおもしろいのです。

そのためには常に精神的に余裕をもって、何でもゆっくり行動するように日ごろから訓練するしかありません。欲しいものに出会っても、すぐに手を出さない、あわてない。目指す作品の隣にあるものから手に取ったり、話をそらせて行きながら、次第に本論に入って行くなどのように、相手に悟られないように行動しなければなりません。落ち着いてと言うしかありませんが、じっくり物を見て、欠点や修復がないか骨董屋さんにも確認すると同時に自分でもしっかり観る必要もあります。ニュー(軽いヒビ)や丁寧な修復などは見逃しやすいですし、見逃すとあとあと嫌な思いをしなければならなくなりますので、買うときに十分注意しなければなりません。そのためにも「落ち着いて」が一番大切なことなのです。

これらは実際の店や露天で実戦で鍛えてゆくしかありません。楽しみながら買うというように、心にゆとりを持って楽しみながら臨んでみてください。

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