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インターネット公開文化講座

文化講座

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古美術・骨董の愉しみ方

日本骨董学院・学院長
東洋陶磁学会・会員
日本古美術保存協会・専務理事 細矢 隆男

掘り出しは一度、失敗は一生

競馬でも、パチンコでも、大当たりすると、もうおもしろくて止められなくなります。自分は才能があるかもしれない、と思いがちですが現実はそう甘くはありません。競馬でも競輪でも一度大当りしたためにそれがもとで財産を使い果たしたという話はよく聞きます。私の友人の一人も一度競馬で大当たりして、札束が背広のポケットに入りきらないほど儲かったそうですが、その思いが忘れられなくてのめりこみ、総額で家2軒分くらい使ったそうです。何でもそうですが、無欲の時は当たるのです。

骨董も同じです。これいいなぁと何気なく骨董市で買った安い皿が、伊万里の古い藍九谷で、識者から誉められたりしますと、こんどはもっといいものをなどと欲を出す。するとつまらないニセモノに引っ掛かったりするものなのです。

「掘り出しは一度、失敗は一生」というタイトルはまさにそうした状況をいっているのです。一度のたまたまの成功に過信して、あとの人生をフイにしてしまうことの喩えでしょう。自信過剰は一番危険です。

そ こでわれわれはどのように対応したらよいのかということになります。自分の実力がつくまでにはかなりの時間がかかります。それまでの間にいろいろ教えてもらえればいうことありませんが、教えてもらうためにはそれなりの授業料を払わねばなりません。それも致し方ありません。
「骨董を買う前に人(骨董商)を買え」ということばもありますが、それはどのような意味なのでしょうか。店で売っている骨董品はすべてその店の主人が選んで買ってくるわけです。ニセモノが多い店の主人はニセモノであり、いいものを置いてある店の主人は本物という見方も、あながち間違いではないでしょう。
そこでよい主人を選べば、おのずとよい骨董品も手に入るという、主人を買うとはそういう意味なのです。そこで自分の好きなものを売っている骨董屋さん、気の合いそうな骨董屋さんを探すわけですが、それがなかなか雲を掴むようなわけでうまくいきません。どの業者さんがいい業者さんなのか外見ではわかりません。

ここではいくつかのヒントをお教えしたいと思いますが、何代か続いている地元の骨董屋さんも信用ができると思います。また新しい骨董屋さんでも、熱心でまじめに対応してくれる、買ったときの骨董品に飽きたときの引き取りについても、いつでも1割から2割付けてくれれば引き取ると言ってくれる場合は信用できるでしょう。

何回かお付き合い(少し買うこと)すれば、相手がどういう人かわかります。
そのようにして何人かと接してみます。お付き合いの仕方にもよりますが、人柄、まじめさは自然に伝わってくるものです。「これは鎌倉時代の古瀬戸の本物の陶磁器ですが、価格は安く出来ませんが、これを資料に付けてあげましょう」などというような業者さんは信用がおけます。よい骨董屋さんと付き合うと、自然に友達のような関係になったり、その店に来るお客たちとの関係が連鎖的に良い輪として広がってゆくものなのです。そういうお店の主人はよい骨董商といえるでしょう。

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